DX化を進めるにあたっては顧客体験、いわゆるUXの価値を高めることが重要であり、そのためにはさまざまな要素が必要になります。ここでは中でも「サービスデザイン」の重要性について、概要やそのプロセスなどを解説します。
「サービスデザイン」という言葉は2020年に経済産業省から発表された「サービスデザインに関する調査研究結果」において次の通り定義されています。
“顧客体験のみならず、顧客体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインすることで新たな価値を創出するための⽅法論”
この「サービスデザイン」においては顧客体験という一連のサービスを含むフロントステージと、サービスを実際に提供する側のオペレーションや仕組みであるバックステージの両面がデザインの対象となります。
参照・引用元:経済産業省「我が国におけるサービスデザインの効果的な導⼊及び実践の
在り⽅に関する調査研究報告書」(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/service_design/pdf/20200420_03.pdf)
フロントステージにおけるUXは期間の違いによって分類されており、利用前となる「予期的UX」と呼ばれる期間は初めて利用するよりも前の期間か、あるいはこの後紹介する3つ以外の期間のことを示します。
利用中である期間を指す「一時的UX」は、インタラクション中に感じる感情における特定の変化が対象となります。何かを経験している時の状況を指しており、このUXにこの後のUXが積み重なり累積的UXとなります。
栄用語の状態を指す「エピソード的UX」では、ある特定のエピソードに関する評価を行います。ある経験を内省しており、前のフェーズである「一時的UX」が集約されてエピソード的UXに繋がります。
利用時間全体を含める「累積的UX」では特定のシステムをしばらくの期間利用したあとの見方を指しており、多種多様な利用期間を回想します。「一時的UX」が集約された「エピソード的UX」が積み重なり、「累積的UX」を構成します。
サービスデザインにおけるバックステージは、現場スタッフなどのサービス提供を行う側のオペレーションや仕組みも含める言葉です。サービスデザインを考える際には顧客体験を中心としたフロントステージだけを考えるのではなく、こういったバックステージの動きなども把握したうえで総合的にデザインを行い、顧客体験や価値をさらに向上に取り組む必要があります。
企業が顧客に対して提供するのはすべて「サービス」であり、提供される「モノ」は「サービス」を提供するための手段・プロセスの一つに過ぎないという考えを「サービス・ドミナント・ロジック」といいます。顧客はモノを買っただけではなく、使った後に意味を見いだして初めて価値が生まれるため、企業はこれを提案し続けなければならないと考えられています。この考え方を実践することで、サービスデザインの更なる補強を行うことが可能になります。
サービスデザインを始めるにあたってはまず初めにインタビュー手法や観察法を駆使して調査を行います。デザインを進めていくための土台とするべく、ユーザーの生の声や実際に起こされた行動などをデータとして収集します。
前のプロセスで収集したデータや調査結果をもとに、ユーザーの本質的なニーズを導き出します。そして顧客体験をストーリーやシナリオなどに落とし込み、その中から必要であると考えられる機能を見出していきます。
アイディエーションで見出した機能などを含め、情報アーキテクチャやワイヤーフレームの設計を行い、デザインコンセプトを取り入れたインターフェースのデザイン制作を実施します。そして実際に触れて検証することが可能なプロトタイプを作成します。
プロトタイプを作成しある程度の感覚がつかめたら、本番環境で実装を行います。この実装に向けては探索や改善・検証のプロセスが重要なため、繰り返し・反復的という要素も必要になってきます。
モノやサービスを市場に届ける企業は、その全体の流れやプロセスも考えながらサービスデザインをしっかりと行うことが必要です。こういったデザインを考えるうえにおいてはその道のプロである専門家にアドバイスを求めることも有益でしょう。