IT技術の発展に伴い、より効率的な経営やスピード感ある意思決定を行うべくDX化の推進が進められています。中でもデータに基づく意思決定を行う「データドリブン経営」は、これからの時代間違いなく必要になってきます。ここではそのメリットや実現するための行動などについて解説します。
近年、DXの推進が行われている中で「データドリブン」にも注目が集まっています。「データドリブン」は直訳すると「データ駆動」といった意味になりますが、具体的に説明すると「ビジネスに活かせる状態として分析が行われたデータに基づき、行動や意思決定を行う」ということを指しています。
これまで、企業では過去の経験や勘などに頼った意思決定が行われてきた傾向がありました。しかし、昨今では会社や事業の多様化といった社会の変化に伴って、データという客観的な根拠に基づいた意思決定を行うデータドリブンの考え方が用いられるようになってきています。
多くの情報が誰でも容易に手に入れられるようになった現代において、顧客ニーズは多様化しています。昔は「行かなければならなかったもの」が今ではどこにいてもいつでも手に入れることができるため、それが当たり前になった顧客のニーズをデータ化し、分析に基づくマーケティングが必要になっています。
今までは勘や経験に基づく経営を行っていた企業でも、データが集められるようになった現代ではそれに基づく意思決定を行うことがあります。これはデータ収集や分析ができる環境が簡単に構築できるようになったからこそであり、競合他社に差を付けられないためには同じく活用していかなければいけません。
情報社会はかなりのスピードで発展しており、日々新たなサービスやプロダクトがどんどん展開されています。この時代の流れに乗って企業経営を行うためには、データドリブン経営が欠かせません。
ビジネスの世界において「確実」ということはまずありません。顧客ニーズや外的環境によって市場は不確実なものになっているため、データや統計に基づく「確率の高い施策・取り組み」を行うことで、リスクを低減させることが期待できるでしょう。
世の中には人工知能と呼ばれるAI技術や既に収集されたさまざまなデータなど、データドリブン経営を目指すために必要な情報資源は豊富に揃っています。ビジネス環境で勝ち抜いていくためにはこれらを利活用しない手はない、といっても過言ではないでしょう。
日本政府はITやシステム環境に置いて「2025年の崖」という問題を指摘しています。これは既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化されている中において、システムの入替などによる課題解決が図れない場合に2025年以降年間で最大12兆円もの損失が生まれると問題提起しているものです。
その対応であるDXの第一歩として、まずはデータ基盤を整えながらそのデータに基づく経営的意思決定を行う「データドリブン経営」に注目が集まっています。
DX化における大きなメリットに「業務効率化」があります。データドリブン経営も同じくで、データに基づく意思決定を行うことにより明確な基準ができ不要な工数を省くことができでしょう。
データに基づく分析を行うことで、最も効率のよい業務プロセスを検討することができます。そうするとより少ない経営資源の投下で大きなバリューを生み出すことが期待できます。
データに基づく分析では過去の状況を踏まえた将来予測も描きやすくなります。根拠ある将来予測を設定することにより今後の行動最適化が期待できるとともに、実績との対比による予実分析も行うことができ今後の予測精度はさらに磨かれていくでしょう。
DX化の目的はシステム化だけでなくビジネスに変革を起こすことです。データに基づき分析を行うと新たな視点から発見が生まれることがあり、新たなビジネスチャンスを掘り起こすことも期待できます。
データ収集はマンパワーではなくシステムで対応する必要があります。実際場面において誰がどのデータを見て何を検証するのかというユースケースを想定しながらシステム設計・構築を行いましょう。
データがあっても活用できる経営資源がなければ意味がありません。収集したデータを利活用するための分析ができる人材や部署を横断して情報が共有される組織体制など環境面の構築も必要です。
目的や分析環境の目処がある程度ついたら、その環境を自動化できるツールやシステムに落とし込む必要があります。自社のフローに適したシステム構築を行うことにより、意思決定までのスピードは格段に向上するでしょう。
データドリブンを活用する上では、さまざまなステップが必要となってきます。どのようなステップが求められるのかを紹介していきます。
まずは、なぜデータドリブンを行うのかといった目的の明確化を行いましょう。そのためにも、どのような意思決定や経営判断を行うのか、その時にはどのようなデータが必要になるのかといった点を整理します。
この時に注目したいのが「経営に必要なデータは何か」という観点。今あるデータを全て利用するのではなく、しっかりと取捨選択を行い、意思決定に必要なデータを決定しましょう。
データドリブンを行うためには、データの収集と蓄積が必要となります。ここでは前段階で明確化した、課題の解決や意思決定に必要とされるデータを収集します。これらのデータは、企業の基幹システムや業務システム、サーバなどから集めるのが一般的ですが、1からデータを集める場合には、データドリブンの目的に応じたデータ収集を行うためのシステムを導入することになります。
データを収集した後は、そのデータにはどのような内容のものが含まれているかを把握するために可視化の作業が必要になります。この時のポイントとしては、Web解析ツールなどを導入し、活用することで効率的に進めること。何しろ膨大なデータが対象になるため、人の手で整理するには人的コスト・時間的コストがかかりすぎてしまいます。
解決したい問題に応じ、可視化したデータの分析を行っていきます。分析した結果を基にして、課題に対する仮説を立てて施策を検討することになります。ビッグデータを分析するためには、専門家のスキル・ノウハウが必要になります。
分析のステップにおいて検討した施策を実行に移します。施策を行うだけではなく、その後の効果測定を行い、細かいサイクルでPDCAを実行していくことによって、より効果的に改善に取り組むことができるでしょう。
ビジネスに必要な情報を収集・分析・可視化することで経営的意思決定を行うためのツールです。企業内のデータベースや外部データを取り込むことで解析を行い、有用な情報を抽出することで意思決定に役立てます。
組織全体や複数のチャネルにある顧客データを1つのデータベースに集積・保管・統合することで、顧客データの名寄せや分析・アクティベーションを行うためのツールです。分析結果を活用することで顧客に合わせた最適な体験を提供することを目的としています。
CRMは簡単にいうと「顧客管理」のことであり、顧客情報や行動履歴、顧客との関係性等を管理するツールです。顧客との良好な関係を維持・構築するために活用されるものであり、分析に必要なデータも蓄積されます。
インターネット上のさまざまなサーバーに蓄積されるビッグデータやログデータを一元管理・分析するためのツールであり、最終的には広告配信などのアクションプランにおける最適化を実現するために使用されます。
「マーケティングオートメーション」というその名の通りマーケティングを自動化するためのツールです。見込み客を開拓するための業務を自動化してくれるものであり、活動を数値などのデータに落とし込み最適なアクションを起こしてくれます。
ERPとは企業全体における経営資源の有効活用の観点から統合的な管理を行うことを示します。営業や製造・販売など事業運営における各プロセスを管理するためのツールであり、各業務システム間におけるデータ連携・統合も行うことができます。
Webマーケティングを取り入れる企業が増えている昨今において欠かせない分析ツールの一つです。WebサイトやECサイトへのアクセスやインプレッションなど、Web上でのさまざまな行動に関するデータを集計し解析・分析することができます。
営業管理システム・営業支援システムとも呼ばれており、営業の生産性や効率を向上させるために導入されるツールです。営業に関するさまざまな情報を一元管理することができ、データに基づく営業戦略を検討するためには欠かせないツールです。
レンタルユニフォーム事業を手掛けるユニメイトでは、AIによる画像認識機能を活用した自動採寸アプリを開発し「その取り込まれた画像データから3Dモデルを作成し実際のサイズを予測する」というソリューションでスピーディーなサービスを提供しています。
スマートフォンにシワに関する肌解析システムを取り入れることで、AI機能を駆使した最新テクノロジーにより販売員が顧客に対して行う肌カウンセリングなどのきっかけづくりに貢献しています。
レシート画像を送らせることで購買データを収集し、キャッシュバックを行うアプリ・サービス提供を行っている事例では、AIの画像認識精度を向上させることにより正確な情報認識を行えるようにし、小売業界のマーケティングデータ活用に貢献しています。
英会話学習サービスを提供するイーオンでは、アプリを使った予習・復習とレッスンを独立させず「学習データバンク」の構築により間違えた問題や習熟度を把握しています。データを活用することでより価値の高い学習サービスを提供しています。
JTBではデータドリブン経営を目指すにあたり、「施策側から逆算する」というコンセプトで開発を進めてきました。それぞれのデータを繋げて蓄積し、統合したデータから分析を行い得られた知見を施策に活用しています。
USJでは「スマートゲートプロジェクト」をはじめさまざまな取り組みによりパーク内行動の可視化に努めてきました。以前は収集できなかったこれらの情報を設備更新などのタイミングで収集できるようブラッシュアップし、取り組み施策に繋げています。
ソフトバンクではデータ重視のビジネスを実践すべくクラウド型BIツールを導入しました。個人別や部署別のデータを全体的に見える化し、蓄積されたデータをもとに精度の高い利益予測などを行うことができるようになっています。
日清食品では社員自らが業務用のアプリ開発を行うことで、多くの定例業務を削減することに成功しています。今後も適材適所で導入を加速させ、更なるデータドリブン経営の導入に取り組んでいます。
百貨店で繁忙期の一つに挙げられるお中元商戦において、ビール4社の商品売上データを解析することで仮説の検証を行った事例では、広告統計やネットの口コミなども踏まえて「広告効果が以外と薄いことが分かった」など今後の意思決定に資する結果を得ています。
電力業界の競争が激化する中、経営効率化やコスト改善を図るために蓄積された購買データベースなどの活用による戦略的アプローチの策定を行っています。調達価格の大幅低減に貢献し、資材部における自立性や専門性強化にも役立っています。