近年、DX化の推進としてデータに基づく意思決定を行う「データドリブン経営」に注目が集まっています。ビジネスで重要なマーケティングにおいてもこの考え方は重要であり、成功させるためにはさまざまなポイントを押さえておかなければいけません。
マーケティングをさまざまな手法で行われますが、中でも「データの価値を信頼し、データを出発点としてマーケティング戦略の策定・実行を行う」ことをデータドリブンマーケティングといいます。従来のマーケティングは「デマンドドリブン」と呼ばれ、「要求」に基づいて計算が行われるモデルです。データに基づくか要求に基づくか、というこの出発点の違いが従来のマーケティングとデータドリブンマーケティングの決定的な違いとなります。
データ収集を行うためには環境構築が欠かせません。デジタルな業務フローを構築するためにアナログなマンパワーに頼っていてはスピード感も出ませんし、正確性も乏しくなってしまいます。そのためどのようなシステム・ツール選定するのかも含めて技術基盤の導入を図りましょう。最近ではクラウド型も含めてさまざまなシステム・ツールがありますので、自社の環境に合わせたものを導入するようにしましょう。
KPIは業績を管理する指標のことであり、まずはこのKPIを設定することからはじめましょう。そしてこのKPIを管理していくうえにおいてどのようなデータを集める必要があるのかを具体的に定義し、継続的にデータを収集するための仕組みづくりを進めていきましょう。
実際の運用場面をイメージしながら、データの収集や加工・分析を行うフローの策定を行います。収集するデータの中には不要なものも存在しており、スムーズに分析するためにはそのデータを加工する必要があります。これらをどのような流れで行うのかを事前に定義しておくことで、効率的な運用を実現することができるようになります。
データドリブンはシステム・ツールの導入だけで完了するものではありません。収集したデータを分析し、その結果に基づく意思決定を行ってはじめてデータドリブンといえます。導入当初の組織ではこのデータに基づくことにアレルギー反応を示す経営陣がいることもありますので、意思決定から実行に移すために組織プロセスの改革も必要になるでしょう。
データドリブンの大前提はデータ収集です。マーケティングにおいて活用できるデータは業界・業種によっても変わってきますが、顧客の購入履歴や利用頻度、属性などが一般的です。また、購入に結びついた履歴だけではなく行動や好み、アンケート調査による結果などの情報も対象となります。これらの情報を顧客個人に紐づけて管理することで、プロモーションをはじめとしたあらゆるアクション・マーケティング活動に役立てることが可能です。
収集したデータは分析をしやすいように加工する必要があります。大元となるデータはすぐ有効活用できるものとは限らず、整理しなければ活用することが難しいこともあります。そのため加工というひと手間を加えることで可視化し、より利用価値の高いデータへとブラッシュアップを図りましょう。この可視化作業をマンパワーでアナログに行うことは非効率的ですから、ツールやシステムを活用しながら進めていきましょう。
加工し整理されたデータが整ったら分析を進めていきます。分析・解析を進めたデータからは課題や仮説・施策を見出し、マーケティング施策の立案や行動計画の策定に役立てていきます。データの単純処理はツールやシステムなどで容易に行うことが可能ですが、分析自体は高い専門性やノウハウが必要になることもあります。データサイエンティストやデータアナリストと呼ばれる人材はこれらのスキルを持っており、ビジネスやマーケティング知識も兼ね備えているとより精度の高い分析を行うことができるでしょう。
分析結果をもとに各種行動計画の策定を行うと共に、実行のフェーズへと移っていきます。分析以降の行動計画を策定においてはマーケティングやビジネスに関する知識・ノウハウが求められ、分析されたデータを根拠にさまざまなアクションプランを検討します。このアクションプランはいつ・誰が・どのように実施するかなど具体的に定めるようにしましょう。責任の所在を明確にすることで、確実な実行を促すことが期待できます。
行動計画は策定・実行で終わりではありません。何事も当初の想定通りにいくとは限らず、特にビジネスの世界においてはトライ&エラーという観点は欠かすことができません。また、せっかくデータに基づく計画を策定しても事後検証が感覚的では意味がありませんので、効果測定と改善案の検討・策定もデータに基づき行う必要があります。当初想定と実績の何が違うかったのかについて、KPIも見ながら実績を振りかえって修正を図りましょう。
ブランド認知率はそのブランドがどの程度認知されているかを測る指標です。商品名やジャンルなどから思い浮かぶブランド・メーカーを聞いた時に挙がる名前が第一想起されるブランド認知であり、定量的に測定できる指標です。
購入を判断するために商品のお試しを行う行為のことをいい、データドリブンマーケティングとしてシンプルで合理的な指標です。自動車における試乗体験が分かりやすく、実際に試乗した人は購入可能性が飛躍的に増加するというデータも提唱されています。
顧客がその商品やサービスに満足しているかどうかという指標であり、CSATと記載されることもあります。この顧客満足度が高い場合にはリピーターになる可能性が高いと判断され、口コミ・評価に寄る副次的効果も期待できます。
既存顧客のうち、商品やサービスの購買を辞める人の割合を示す指標です。サブスクリプションや定額課金サービスのような継続性のあるものでは簡単に測定することが可能です。新規顧客獲得にコストがかかるケースなどで参考にしたい指標の一つです。
ダイレクトメールなどのようにこちらからオファーを送った際に応諾した顧客の比率を示す指標です。インターネットを活用するビジネスにおけるWebマーケティングではクリック率やコンバージョン率など細かな指標も計測することができます。
正味現在価値は現在価値から費用を差し引いたものであり、NPVと表記されることもあります。ファイナンスの世界においては同じ金額であっても時点が違うと価値が違うとされており、マーケティングでもその観点を取り入れた利益計算を行うことがあります。
顧客の獲得からその後に得られる利益、マーケティング費用、対応費用などを考慮しその顧客がトータルでどのくらいの価値を企業にもたらすか、を算出する指標です。継続的な取引が特定の顧客と発生するビジネスにおいて活用できる指標です。
売上高から費用を差し引いたものが利益ですが、純粋な売上原価を除いた粗利益や販売にかかる費用を差し引いた貢献利益、全社の共通費も考慮した共通費負担後の営業利益などさまざまな観点があります。
内部収益率はIRRとも表記され、マーケティングにおいてはキャンペーンや施策を実施する際の投資利回りを意味します。どれだけのコスト投下を行ってどれくらいの利益が獲得できるのかというシンプルかつ重要な指標になります。
累計の投資支出と同額の累計利益が得られるまでどの程度の期間がかかるのかを表す指標であり、マーケティングにおいては広告費などのコストをどれくらいの期間で回収できるのか、という観点からモニタリングされる指標です。
直帰率はユーザーがそのWebサイトに訪れた際、最初にアクセスしたページから遷移せずに離脱した割合を示す指標です。購入行動や他ページへの遷移を行わない割合が多い場合、その行動を起こさせるために必要な対策を検討する必要があります。
リスティング広告やディスプレイ広告などにおいて、1回クリックされるために必要な費用がクリック単価です。リスティング広告の場合は80円から1,000円と幅広い設定になっており、コスト管理上この単価は正確に把握しておきましょう。
顧客がインターネット上で広告をクリックし、商品やサービスを購入した割合を示す指標です。最適な広告表示を最小限の表で行い、最大限の効果を得るための分析指標として役立ちます。
商品やサービスに関するWebページへのアクセスのうち、どの程度がシェアからの流入であるかを示す指標です。口コミや共有などによる社会的影響の大きさを分析・把握するための指標として役に立ちます。
収益を広告費用で除すことにより、投資に対する効果を測定するシンプルな指標です。それぞれの広告媒体ごとにコスト・収益で算出することで、どの広告を優先すべきかといった意思決定を明確に行うことが可能です。
データドリブンマーケティングを実現させるためにはデータ収集とシステム導入だけでなく、組織としてデータの利活用を行える環境の構築・文化の醸成が必要です。成功させるためにはデータの利活用ができるように組織を改革するとともに、リテラシーを向上させる施策を打つ必要があるでしょう。
データドリブンマーケティングを実現するためにはさまざまなポイントをしっかりと押さえながら環境整備や計画策定、モニタリングを行わなければいけません。薄いリソースの中でそれらを実現するのは非常に難易度が高いため、DXコンサルなどの専門家に相談することも検討してみましょう。