アプリ開発を行うにあたっては、企画案を検討した後にRFP(提案依頼書)を作成しベンダーに提出、見積もり提案を経て採用・開発開始という流れで進めていくことになります。ここではそれらのプロセスのうち、企画案・企画書作成のポイントについて解説していきます。
アプリを開発したとして、利用するのは自分たちではなくユーザーです。ユーザーが満足するアプリを開発できなければ、利用されることがないため開発する意味がありません。そのためアプリ開発においてはユーザーを理解することが非常に重要です。
想定しているターゲットユーザーはどのような課題を抱えているのか?どのような課題を解決するためにどういうニーズが考えられるのか?などを、ユーザーの視点に立って考える必要があります。せっかく開発したアプリが使われずに終わってしまわないよう、ターゲットは明確に定義しておきましょう。
アプリ開発というプロジェクトは「目的」ではなく「手段」です。そのため、アプリ開発を経て行きつきたい、目指すべきゴールというものが存在するはずなのです。この目的は大きく分けて「ユーザーにとってのゴール」と「ビジネスとしてのゴール」の2つがあり、この目的をしっかりと定めておくことで軸となる部分を固めやすくなります。
「ユーザーにとってのゴール」であれば、ユーザーのターゲットとアプリを通じてユーザーに達成してほしいことを考え、「ユーザーに満足してもらうにはどうしたらよいのか」を考えるようにしましょう。
また、「ビジネスとしてのゴール」であれば利用頻度や購買数などといった数値の指標を設定することで、「ビジネス上で達成したい目的」を明確にしておくとよいでしょう。
ユーザーに対して提供するアプリは、大小さまざまなユーザーの課題を解決するためのソリューションとなります。そのため、想定している「ユーザーとしてのゴール」を達成するために、どのような機能やサービスがアプリに必要なのかをリストアップしていきましょう。より具体的にサービス内容を検討することで、ターゲットユーザーにとってそれが価値あるものなのかどうか、またユーザーの持つ悩みや課題を解決するソリューションになり得るかどうかを検討することが可能になります。
アプリ開発のみならず、ビジネスにおいて競合を知ることは重要かつ有益です。市場に自社だけ、という状況はまずありえませんから、他社との競合をどう勝ち抜いていくか、どう違いを付けていくかは必ず考える必要があるでしょう。
まずは自社の現状における課題の洗い出しを行い開発すべきアプリを認識し、競合や類似アプリをしっかりと研究したうえで差別化できる点・自社として活かせる強みなどを検討するようにしましょう。
アプリにはデバイスにダウンロードして使用する「ネイティブアプリ」と、Web上で使用する「Webアプリ」の2通りがあります。多くの方が普段利用しており認識しているアプリは「ネイティブアプリ」だと思いますが、端末の種類や開発言語などによって開発の難易度が大きく変わりますので、どちらのタイプのアプリを開発するのかは決めておく必要があります。
ネイティブアプリは動作が早い・各OSのアプリストア利用できるという導線のよさがありますが、デバイスやOS環境に合わせた開発が必要になります。一方のWebアプリであれば開発工数は削減できますが、動作の遅さやデバイス機能と連携しづらいといったデメリットもあります。
ユーザーが実際に利用する場面を想定し、どちらの方が使い勝手がよいか、また自社における開発工数・コストなどのさまざまな観点から検討して決めるようにしましょう。
対象となる想定ユーザー(ターゲット)が設定できれば、そのユーザーがどのような端末で開発するアプリを利用するのかという想定も立つはずです。アプリの種類とあわせて方針が決まったら、どのOSに対応するアプリを開発するのかを決定しましょう。
検討するための情報としてはiOS端末なのかAndroid端末なのかというデバイス面のほか、App StoreなのかGoogle playなのかというチャネル面があります。さらにはそれぞれのOSにおいて、どの程度までの古い機種に対応させるか、という点も考える必要があります。基本的には対応させる範囲が広がれば広がるほど工数・コストが必要になりますので、想定ターゲットをどこに絞るかでプロジェクト全体の規模も大きく変わってくるでしょう。
みなさんも、アプリを使っていてストレスを感じることはないでしょうか。「ここが使いづらい」「ここがこうだったらいいのに・・・」というようなユーザーにとっての使いづらさは、ストレスに直結するため利用されなくなる理由のひとつになります。
そのためデザイン性とユーザビリティについてはしっかりと作り込む必要があり、競合アプリとの差別化においても重要です。アプリ開発を専門の業者に依頼する場合には、デザイン性やユーザビリティを高めることに積極的かどうかという点にも着目しておくとよいでしょう。
アプリ開発以外でもそうですが、プロジェクトを成功させるためにはスケジュールや進捗管理がとても重要です。特に他社に開発を依頼する場合には、社内・社外の関係者も含めた進捗管理が必要になりますので注意しましょう。開発からローンチ(配信)までのスケジュールをしっかりと固めることで、アプリの広告宣伝や主要事業との関連性などを検討することが可能です。企画段階において「どのようなアプリ」と「どのようなスケジュール」で開発していくのか、を明確にしておくことで、実現可能性の検討や開発工数・かかるコストの試算などが可能になるでしょう。
スケジュールを検討するにあたっては、作成する機能の数や複雑さ、アプリ開発に携わる利害関係者の数、連携する機能やシステム、その他物理的な制約などさまざまな事象が影響してきます。ガントチャートなどのようなツールを使ってスケジュール作成・進捗確認を行う方法もありますが、開発を専門にやっている会社であればそれらのノウハウも豊富に有しているでしょうから、開発会社への委託を検討してみるのも一つの方法です。
ビジネスにおいて最も重視すべきことは「儲ける」ことです。利益が出なければそもそも事業が継続できませんし、アプリ開発のようなプロジェクトは利益をさらに出すため、ビジネスの価値を向上させるために行う投資です。投資である以上必ずついてくるのが回収の議論ですので、「いくら投資するのか」「投資した結果損益はどのように推移するのか」「最終的にどの時点で投資を回収できるのか」といった具体的なメルクマールは押さえておく必要があるでしょう。反対に、利益計画段階で黒字の見通しが立たないプロジェクトになるのであればその投資は実施すべきでない、ともいえるでしょう。
特に稟議を上げて投資の意思決定を行うような会社においては、実現可能性が高く信頼性のある利益計画が作成できれば社内での意思決定がスムーズになり、時間的価値も高められるプロジェクトとなるでしょう。
最も重要であるといっても過言ではないのが、関連法規のチェックです。世の中にはさまざまな法律がありますが、自社の開発するアプリがローンチされるにあたっては特定商取引法や資金決済法、景品表示法、出会い系サイト規制法、その他著作権などさまざまな法律に抵触しないかを必ず確認する必要があります。ここの確認を怠った結果、重大な法律違反となり刑事罰を受けたり、訴訟を提起されて賠償金を支払うことになった・・・などとなった場合、せっかく取り組んだプロジェクトの意味がなくなるどころかマイナスの状況となってしまいます。特に著作権などの知的財産権やライセンス関連については、無自覚のうちに権利侵害をしてしまうリスクもありますので、しっかりと確認を行うようにしましょう。
特に昨今では世論としてもコンプライアンスに厳しくなっていますので、直接的に違反をするものがないか確認することはもちろん、グレーな状況でユーザーからの低評価やその他風評に繋がるリスクが潜在していないかどうかも検討することをおすすめします。また、同じく間接的な話にはなりますが、自社内におけるコンプライアンスやガバナンスの体制についても十分に確認しておくようにしましょう。アプリ開発やそれ以外の部分も含めて重大な瑕疵が発覚した場合、仕様変更を強いられたり開発を中止することになるなど事業上で大きなダメージを受けることになります。自社のアプリ開発プロジェクトを成功させるためにも、しっかりと事前の準備や確認は行うようにしましょう。
以上、このページではアプリ開発・企画における準備の重要性を解説しました。
アプリ開発は工数とコストがかかるプロジェクトなので、小さく始められるリーンスタートアップの考え方が重要です。ローンチ後にもPDCAの管理と細かな追加修正が必要になりますので、それらも含めたサービスがよい開発会社を選ぶことをおすすめします。