アプリ開発は企画・設計・実装・テストという流れで進められていき、前半の上流工程を担当するSE(システムエンジニア)や後半にあたる下流工程を担当するPG(プログラマー)への人件費などが主たるコストとなってきます。
アプリ開発にかかる費用は依頼内容や依頼する先によって当然異なりますが、基本的には人件費と開発期間で決まってきます。アプリ開発会社としては人件費に開発期間を乗じ、その他かかる実費を加えて開発費用を算出します。
人件費はSE・PGの時給単価×稼働時間数から算出され、開発期間はOSや開発形式などのさまざまな状況・要因によって幅が出てきます。そして実費としてはサーバー費用などの固定費が想定されます。
特に人件費部分は担当するSEやPGの経験・技術によって変わりますが、SEであれば月額初級SEの60万円~上級SEの160万円くらいと幅があり、プログラマーは月額50万円~100万円程度が相場といわれています。この他デザイナーやディレクターなど、エンジニア以外の人件費も発生することを想定しておきましょう。
さて、アプリ開発費用の相場について、概算としては前項で解説した通りです。しかし実態としてはどうなっているでしょうか。ここでは政府統計から、賃金構造基本統計調査の職種別賃金額を基にSEとPGの年収から大まかな時間あたりの給与を算出してみます。
2019年の統計データにおける、企業規模10人以上の数値を元にした試算結果は以下の通りです。
【システム・エンジニア】
⇒380.0千円÷170時間=約2,235円
【プログラマ】
⇒304.4千円÷173時間=約1,760円
プログラマの方が平均年齢も若く勤続年数も浅いこともあり時間あたりの金額もやや低額になるという傾向にありますが、実際には担当者の技術や経験によって変わってくる部分もあります。また、開発環境実態としては当然委託先の利益を乗せて請求することが考えられるため、大雑把に見ても3割程度は上乗せして考えるようにしておきましょう。
情報参照元:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084610
人件費の次に開発費用へ大きな影響を与える開発期間ですが、これは開発するアプリの種類によってさまざまです。短いものであれば1か月から3か月程度でできますし、長ければ半年から1年程度を要するプロジェクトもあります。開発するアプリが対応するOSの種類などによっても異なりますので、2つ作るなら費用は2倍かかるつもりで準備をしている方がよいでしょう。
また、日本最大級のBtoB一括見積サービス「アイミツ」における、アプリ開発の費用相場は以下の通りです。アプリ開発を検討されている方は、あくまでも参考情報として確認をお願いします。
<開発費用相場>
アプリのタイプ |
費用の目安 |
Androidアプリ |
150万円~ |
iPhoneアプリ |
150万円~ |
ソーシャルゲーム |
3,000万円~ |
アプリ開発の平均費用相場 |
250万円~ |
<タイプ別費用相場>
アプリのタイプ |
開発費用の相場 |
ショッピングカート系 |
100万円~300万円 |
カタログ・フリーペーパー系 |
50万円~100万円 |
通話・メッセージアプリ系 |
100万円~500万円 |
ツール系 |
50万円~300万円 |
ゲーム系 |
300万円~1,000万円 |
SNS位置情報系 |
500万円~1,000万円 |
アプリ内課金・多言語・マップ対応 |
各10万円~20万円 |
SNS連携・アクセス解析 |
各5万円 |
学習アプリ系 |
50万円~300万円 |
情報参照元:https://imitsu.jp/cost/app-developer/
アプリをリリースするためには、インターネット上の住所に該当するドメインの取得が必要です。これは取得するドメインの種類によって金額が変わりますが、年間で数百円から数万円を要します。
Wi-Fi設定時などのレンタルサーバーを使用する場合に必要なSSL証明書は、データ管理の取得・発信に関する通信システムであり暗号化を担うシステムです。大体5万円から10万円程度の費用がかかります。
アプリ開発を行ううえで欠かせないのがサーバー費用で、これはデータの管理・保管を行うストレージ場所としてかかる費用です。どこのサーバーを使うのか、またどの程度の容量を要するのかによっても変わりますが、数千円から数万円が毎月かかることとなります。
その他自社や開発会社の設備状況などに応じて追加で機材や設備が必要になる場合、実費としてコストが必要になります。見積りを取得する際には内訳まで確認し、何にいくらかかっているのかはチェックしておきましょう。
必要な部分にはしっかりとコストをかけたいアプリ開発ですが、高品質を担保しつつもある程度のコストダウンは図りたいところです。実際の開発場面においては、以下のような点に注意しながらコストの検討を進めてみてはいかがでしょうか。
最も楽な開発方法は外注ですが、外注すると委託先も利益を求めるため相対的にコストは高くなります。自社でできる部分は内製化することで、無駄なコストを削減できます。
しっかりとした計画を練ってプロジェクトを進めれば、修正や後戻りが少なく工数が削減できます。要件定義などをしっかり作り込むことで、変更や修正などの追加コスト発生を防ぐことができるでしょう。
リリースするまではユーザーからの反応が得られませんから、あれもこれも実装していては必要かどうかの判断ができません。そのためコア機能のみを実装して小さくはじめ、リリース後に必要だと判断できるものを追加していくという方法も有益です。
自社が主体となって開発する方法のほか、レベニューシェアというアライアンスも選択肢として存在します。コストとして支払う形ではなく、相互協力で生み出した利益を配分するという考え方であるため、イニシャルコストを抑えられる可能性があります。
コストがかかるアプリ開発ですが、安かろう悪かろうではせっかく開発する意味がありません。そのためしっかり開発パートナーを見極める必要があり、ある程度品質の高いアプリを開発するためにはそれなりの費用も必要であることを覚悟しておきましょう。実際、開発場面におけるトラブル事例を2つ紹介しますので、こういったトラブルを事前に防止できるよう参考にしてみて下さい。
旅行代理店がシステム開発会社に発注をしたケースでは、基幹業務として宿泊予約などに使用できるシステム再構築の開発スケジュールが大幅に遅延。体制や開発側人員を見直したものの当初の見積り額を大幅に超えてしまう結果となりました。開発側はさらに1年以上の延伸を申し出たため、発注側は作業中止と契約解除を求めました。その後交渉がまとまらず訴訟に至りましたが、3年余りの裁判を経てどちらも請求を放棄、裁判費用を双方負担で和解が成立しました。
石材の加工販売を行うクライアントの販売管理システム開発を一括請負したシステム開発会社が訴訟を起こした事例です。納品したシステムの処理速度が遅く不具合が発生したというクレームに対し開発会社側は不具合と認めず、補修も行わなかったところ発注側が支払いを拒否。納品後に支払いがないとのことで開発会社が発注側を訴えましたが、発注側も契約解除と前払い金返還を求めて反訴、結果として不具合は重大なものとして契約解除の原因になるとの判決が下りました。
参照:https://system-kanji.com/posts/system-proceedings
アプリ開発にはさまざまなコストがかかりますが、節約一辺倒では安かろう・悪かろうになりかねません。必要な部分には必要なコストをかけ、より満足度の高いアプリ開発が実現できるよう、しっかりとコスト構造を理解しておきましょう。