さまざまな企業や業界から注目されているDXとは、データやデジタル技術の活用によって人々の生活をより良いものに変革させていくことを指しています。
現在、卸売業界ではインターネットの広がりによる中間流通業の価値低下やこれまで蓄積してきたデータの有効活用ができていないなどさまざまな問題を抱えています。こちらのページでは、このような課題を解決につなげるDXについて解説していきます。
もともと卸売業は中間流通業としてさまざまな役割を担ってきた業界ですが、インターネットの広がりによって現在は卸売業の仲介でより価格が高くなる、納期が遅くなるといった弊害が見られるようになってきたという面があり、卸売業が「中間コスト」としてより強く意識されているといった面があります。
このことから、卸売業においてもDXを推進するとともに、さらなる高付加価値ビジネスへの転換が求められている状況となっています。
さらに、2020年6月の「改正卸売市場法」の施行による影響もあります。この改正によりいくつかの変更が行われていますが、ここで注目したいのが「中央卸売市場が民間にも開放された」という点です。一般法人でも認定基準と要件を満たせば、中央卸売市場を開設できるといった状況になっています。
参考:6月から改正される「卸売市場法」。変更内容や問題視されている点は?│飲食店ドットコム
現状、卸売業界はさまざまな課題を抱えている状況にあるといえます。
上記でご紹介している通り、インターネットの広がりによって中間流通業の価値の低下が起こっている、という点が卸売業界における大きな課題といえます。
ITシステムの老朽化やIT人材の不足といった理由から起こると考えられている「2025年の崖問題」も課題として挙げられています。この2025年の崖問題とは、日本企業がDXへの取り組みを十分に行わなかった場合に2025年以降に年間で最大12兆円の経済損失が発生すると予想されているものです。
これまで使用してきた古いシステムをそのまま運用していた場合、今後担当者の退職などで運用を行える人材が不足することによってシステムのブラックボックス化につながってしまう可能性もあります。
企業のDXを考える上で重要なポイントとして、ERPシステムに蓄積したデータを活用する、といった点が必要となってきます。ただし卸売業においては入れ替わりの激しい大量の商品情報と膨大な物流情報をERPシステムに連携させることから、データを有効に活用できている企業はあまり多くない状態といえます。
電話やFAXなどによる受注を行っている場合には、口頭のやり取りや文字の読み取りがしにくいといった原因から確認に時間を要したり納品ミスが発生することで、生産性が低下するといった課題もあります。
卸売業が抱えるさまざまな問題を解決するためには、企業のDX化によって経営体制を整えることが重要になってきます。このような取り組みを行うことにより、「DX化の波」「法改正の波」といった卸売業界を揺るがす波へ対抗できる体制づくりが行えるといえるでしょう。
卸売業界でDXを推進することで、下記のようなメリットが得られると考えられます。
これまで人の手で行っていた業務についてロボットやAIの活用によって省人化・効率化を図ることが可能になります。コストを削減するといった観点からも、財務体質の改善にもつながるでしょう。
DX化を行うことにより、これまで蓄積したデータを活用できるようになります。例えばデータの分析によりこれまでよりも精度の高い需要予測が可能になり、無駄の削減に繋げられますし、新たなビジネスチャンスを見つけられる可能性もあります。
近年、企業のDX化が非常に注目されていますが、卸売業会ではDX化がなかなか進まないという現状があります。その理由は下記のものが考えられています。
「卸売業でECを利用する中で、どのような課題を感じていますか?」というアンケートに対し、22%の企業が「手数料や開発費など運用コストが高い」という回答を行っています。このアンケートから、まず卸売業でDX化が進まない理由として「コストの問題」があるといえます。
また、上記と同じアンケートにて「EC・IT(デジタル)に精通した社内人材の不足」という回答が38%、「知識不足で活用できない」といった回答が17%となっており、企業の中での人材不足もDX化が進まない原因のひとつになっているという現状があるといえるでしょう。
こちらのページでは、卸売業界におけるDXについて紹介してきました。さまざまな課題がある中でDX化を推進するためには、外部のコンサルの力が必要となります。こちらのサイトでは、おすすめのDXコンサルティング会社を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
これまで角上魚類では、買い付け業務で受注明細やセリ伝票を使用していましたが、業務の拡大に伴い発注・買い付けミスの発生や誤配送、事務作業の負荷が課題となっていました。
アプリの開発においては現場観察によりバイヤーと配送担当者の業務フローの理解、手書きの受注明細やセリ原票の分析から実施。さらに全体業務フロート課題の視覚化、改善ポイントの洗い出しを行いました。
その上で現場担当者への導入負荷をできる限り抑えるシステムを導入しています。
これまで使用していた受注明細やセリ原票のフォーマットを踏襲したUIデザインを使用することによって、使い勝手の良さが評価されています。また、ペーパーレス化にも貢献できたといった導入効果も見られました。
オートバイのタイヤは溝の形状やサイズなど細かな違いがあり、ベテラン作業担当者でないとなかなか見分けるのが難しいという点が大きな特徴となっています。新人の場合はなかなか見分けられられず、異なる品番の棚にタイヤが置かれているケースもあり、誤出荷や積み残しなどが発生していた状況でした。
こちらの会社では、課題解決のためにタイヤにセンサーを取り付けてタイヤを見分ける仕組みを導入しました。この仕組みにより、タイヤのピッキングと同時にバーコードでチェックすることが可能となりました。
バーコードでのチェックが可能となったことにより、作業時の効率や正確性が格段に上がったという変化が見られました。さらに、同社は売上拡大とともに物流倉庫の拡大を行っており、倉庫スペースは倍増したものの物流担当者の人数はそのままで対応ができています。
給食の原材料やフードサービス機器の卸売サービスを提供している株式会社南給では、不動在庫があることによって倉庫料・賞味期限切れなどが発生。無駄なコストにつながっているという課題がありました。
企業により選定した17品目についてAI需要予測を取り入れました。
入出庫明細や在庫管理表など使用したデータのみでは期待通りの精度が出なかったことから、今後さらに需要契機ヒアリングや関連データの取得などによって再検証を行っていく予定となっています。ただし、企業側において自社での課題が明らかになった、AIはどのように活用できるのかなど理解を深められたという変化が得られています。