さまざまな業界で進められているDX化ですが、小売業界においては主に受注・品出し、会計などの業務プロセスを自動化することを指します。これにより現場の効率化や、購買情報や顧客情報などのデータ活用がしやすくなり分析・フィードバックへとつなげられるようになるでしょう。経済産業省が発表した「2025年の崖」の課題もあり、DX化は業種を問わず急務です。DXの推進は国家プロジェクトとしても取り上げられており、対応が必須の変革といえます。
インターネットの定着とスマートフォンなどの各種デバイスの拡大・普及などを背景に、小売業界には「ECサイト」という巨大なマーケットが形成されました。このマーケットは今後も拡大していくことが予想されます。
消費者の購買行動がネット経由のスタイルへと変化しつつある今、従来型の小売業者は経営体制の根本的な見直しを迫られています。
従来型の小売業者では、店舗の維持費や従業員の人件費、商品の保管コストなど、商品を売る前提としてのさまざまな費用が必要です。一方でECサイトでは、実店舗が不要で従業員も必要最小限で問題ありません。
従来型の小売業者は固定費を商品価格に上乗せしなければならない以上、価格競争においてECサイトに太刀打ちできない状況となっています。
日本は少子高齢化が進んでおり、働き手の数が減り続けています。小売業界も例外ではなく、慢性的な人手不足に悩まされているのが現実です。
人手不足になると既存の従業員に負担がかかり、それを嫌って従業員が退職するという負のスパイラルに陥ってしまいます。
新型コロナウイルスの流行を止めるべく「3密(密集、密接、密閉)」と呼ばれる状況をできるだけ避けるよう政府から指導がありました。しかしながら、小売業界のなかには閉じられた店内で大勢の客と触れあって働かなくてはいけない従業員やパートの人が多くいます。
また、消費者にとっても3密の状況に陥りやすい小売店を避け、ネットショッピングを利用するなど小売業界にとって厳しい変化となりました。
DX化は「変革」と呼ばれるほど大きなものであり、実行には綿密な検討が必要です。また、その過程にはさまざまな課題が出てくると予想され、なんとしてもやりきるという覚悟も必要とされます。
そして、覚悟は経営陣だけでなく従業員にも必要です。従業員のなかにはこれまでの仕事のやり方が一変してしまったり、やりがいを感じていた仕事がなくなってしまったりといった人が出てくるでしょう。それでもDX化は将来に向けて必ず必要だという思いや本気度を経営陣が従業員に伝える必要があります。
DX化にはクラウドやIoTを利用したさまざまなデータの活用が必要ですが、小売業界が従来から活用しているレガシーシステムのなかにはこれらに対応できないものが多くあります。DX化は変革であり、DXのための新しいシステムとレガシーシステムの共存ができないことも多いでしょう。
また、長く使われてきたレガシーシステムにはそれを活用する多くのノウハウが蓄積されており、それを捨て去ることに抵抗を覚える従業員もいるはずです。
新しいシステムを導入してさまざまなデータを取得できるようになっても、それを活用できなければ意味がありません。活用にはAIの利用が求められますが、そのためにはデータ分析やAIに精通したIT人材が必要になります。
しかしながら、これまで必要なかったそのような人材を抱えている小売企業は少ない上に、日本全体でIT人材が不足しており、人材不足によってDX化が滞る可能性があります。
小売業をDX化することでさまざまなメリットが享受できます。
小売店舗にとって目の敵と考えられてきたネットショッピングサイトですが、DX化によってネットショッピングサイトと実店舗の融合が実現できます。
OMO(Online Merges Offline)と呼ばれるこのコンセプトでは、たとえば店頭受取予約、スマートフォンでの支払い、店頭商品をお気に入りとして登録、自宅への実店舗からの配送、収集したデータを元にした一人ひとりに特化したサービスの提供などを実現可能です。
すでにOMOは中国で広く活用されており、日本でも浸透が期待されます。
先述の3密対策としてはセルフレジやセミセルフレジの導入が効果的です。密を避けられれば感染症の流行で離れてしまった顧客を取り戻せるかもしれません。
また、セルフレジやセミセルフレジの導入は必要な従業員数削減にもつながり、これからの少子高齢化社会にあった仕組みといえるでしょう。
DX化によりクラウドと連携できるようになれば、小売店でもかんたんにECサイトを持てるようになります。これにより、さらに多くの顧客獲得につながるでしょう。
また、ネットショッピングで必要な配送までの時間や送料を節約できる、BOPISと呼ばれる店頭受取システムも新たなニーズを獲得できるチャンスです。店舗に来てくれればその場で他の商品を衝動買いしてくれるかもしれません。
AIカメラの導入もさまざまなメリットを生みます。たとえば怪しい動きをしている顧客を検出して万引きを未然に防止したり、万引きなどの前科がある不審者の顔を検出して警戒したりなどの犯罪対策が可能です。
また、顧客の動きを解析することで商品の陳列を工夫したり、商品が品切れになりそうな状況を検知して早めに品出ししたりと、機会損失の予防にもつなげられます。
引用元:日本アイ・ビー・エム株式会社公式HP(https://www.ibm.com/blogs/smarter-business/business/autobacs-dx-2021/)
コネクテッド、自動運転、シェアリング、電気自動車が大きなトレンドとして市場で急成長している今、自動車関連業界は100年に1度といわれる大きな変革期を迎えています。業界で勝ち抜き、そして業界を率先するためには、DXへの取り組みが急務と同社は考えました。
DXにより車の枠組みを超えた地域課題の解決を目指すプラットフォーム「AUTOBACS DX Platform」を構築。人と人・モノとモノのつながりをテーマにした「コミュニティ・アズ・ア・サービス」と、社会・安全性・拡張性をテーマにした「スマートシティ・アズ・ア・サービス」の大きく2つのカテゴリに分けました。
「コミュニティ・アズ・ア・サービス」の具体的なサービスとして「クルマのえん」を立ち上げ、中古車売買の個人間取引でブロックチェーンを用いた安全性の高い仕組みの構築に成功しています。
高齢者の交通事故を防ぐため、高台にLPWAのアンテナを立ち上げて高齢者の見守りサービスを始めたり、IoTを使ったタクシー配車システムを行ったり、ドローンで山間部に医薬品を配達したりなど、様々な実証実験を進行中。D(デジタル)よりもX(トランスフォーメーション)が重要との考えのもと、デジタル技術を含めた包括的なDXを目指して邁進中です。
引用元:IBM公式HP
(https://www.ibm.com/blogs/smarter-business/business/autobacs-dx-2021/)
引用元:株式会社流通ニュース公式HP(https://www.ryutsuu.biz/strategy/n082613.html)
特徴の異なる双方の強みを活かす形で、「次世代スマート広告プラットフォーム」などのソリューションを提供するビジネスを目指しました。
AIを活用し、購買履歴などの各種データからユーザーにとって最適な広告を配信。また、アプリや店頭サイネージなどを活用した新たな広告事業も企画し、小売業者が広告収入を得られるビジネスモデルの創出を目指しています。
サイバーエージェントのアプリ開発力とNTTコムのデータ蓄積・分析力がハイブリッドし、小売業に新たなビジネスチャンス、新たな価値創造がもたらされることを目指し、目下プロジェクトが進行中です。
引用元:(https://www.ryutsuu.biz/strategy/n082613.html)
トイレの混雑情報を一覧化して知らせるデジタルサイネージ 画像引用元(https://club.informatix.co.jp/?p=13024)
これまで「行列ができる」ことは人気店の証でしたが、新型コロナウイルスの流行により人々は密を避けるようになり、「空いている」店を求めるようになりました。
VACANはレストランやカフェ、トイレなどの空き情報をリアルタイムに検知・配信するサービスを開始しました。元々は商業施設などでデジタルサイネージを利用しトイレの空き情報を提供するサービスでしたが、店舗の空き情報や、整理券をスマートフォンに配信し待ち時間を通知するサービスなどもおこなっています。
新型コロナウイルスの流行によりVACANの需要が急騰しました。災害時の避難場所の空き情報を提供する取り組みも始めており、防災分野でも注目を集めています。
引用元:空間情報クラブ
(https://club.informatix.co.jp/?p=13024)
引用元:株式会社モンスターラボ公式HP(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_cashb/)
レシートに含まれるデータは小売店にとって貴重であり、できるだけ多くのレシートを取り込む必要があります。しかしながら、画像データを既存のOCRでテキスト化すると正しく読み取れないデータが多く、人手で修正するコストや時間が課題でした。
文字認識自体が問題なのではなく、レシートの撮影画像の質が問題であるとわかり、AIによる文字認識をおこなう前に画像処理によってレシート画像の画質を改善しました。たとえば画角によってはレシートに記載された文字が1行として認識されないなどの課題を解決しています。
人手によるレシートデータの確認・修正作業を大幅に改善できました。また、より早くデータを取り込めるようになり、フィードバックがしやすくなっています。
引用元:Monsterlab
(https://monstar-lab.com/cases/cashb/)