DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を耳にすることも多いですが、どのような意味なのか知っていますか?一般的にはデジタル技術を活用することで、生活や社会形態を変化させるということです。業務・組織・風土・プロセスなど企業全体を変革させ、競争上の優位性を発揮させることを意味しています。
不動産業界においても「不動産DX」「不動産テック」という言葉が用いられていますが、厳密には二つの意味は微妙に異なるので注意が必要です。不動産テックとは不動産業界が最新のデジタルを活用して新たなサービスを生み出すことを意味しており、そういった点ではDXと同じ意味となります。しかしテックの場合はスタートアップ企業も含まれており、既存の企業が変革するわけではないため、この点に関してはDXと意味が違うのです。
不動産業界におけるDXの代表的な具体例としては、FAXからの脱却が挙げられるでしょう。不動産業界は未だにFAXなどの紙ベースでのやり取りが多く行われており、ペーパーレス化がほとんど進んでいません。
不動産業界はアナログ業務が常態化されており、業務負担が大きい現状があるでしょう。また消費者のニーズの変化や多様性に対応する必要があります。業務の効率化向上や消費者のニーズに応えるためにも不動産DXを推進することが大切です。
不動産業界と言っても、開発・販売・賃貸・管理の4つに大きく分けられます。開発をメインとする大手ディベロッパーなどは豊富な人材を確保しているケースも多く、ITなどを導入している企業が多いでしょう。一方で、身近な小さな不動産会社の場合は慢性的な人手不足の状態があり、いまだに手書きの日報などアナログのままの企業も。不動産管理だけでなく内覧や契約などに時間も割かれてしまうため、長時間労働になっている状況は不動産業界の課題と言えるでしょう。
日本は少子高齢化の状態が急激に進んでおり、出生率低下による人口減少の問題が大きくなっています。また都市部に若年層が流出し、地方の人口は減少する2極化という社会問題もあるでしょう。今後は空き家の増加や新築物件の需要低下などの状況が進む可能性が高いと言われており、不動産業界の規模の縮小が懸念されています。
大手の不動産会社であれば、ITを上手く取り入れデジタル化が進んでいるでしょう。しかし不動産業界全体を見れば、アナログでの業務が多く残されている実情もあります。書類のやり取りはFAXや郵送などを用いるケースも多く、日報なども手書きの会社も未だに存在しているようです。とくに小さな規模の不動産会社であれば従業員の人数も少なく、ITに詳しい人材確保が難しい状態と言えるため、どうしてもデジタル化が進まないのでしょう。
ITツールを導入することで、これまで手作業で行っていた業務のほとんどを自動化することができ、ヒューマンエラーの防止にもつながります。また部署内・社内外での情報共有もしやすくなり、業務効率化アップが図れるでしょう。
さらに手作業・単純作業がデジタル化されたことで工数削減ができ、長時間労働などの労働環境の改善にも効果が期待できます。たとえば不動産の査定など高度なスキルが求められるような業務もITツールを導入することで、スキルの未熟な職員でも対応できるようになるでしょう。
不動産物件を探すとき、インターネットを活用する物件探しをする人がほとんどです。ネットで気に入った物件を見つけた後で、その物件を取り扱っている不動産会社に相談をするという流れが主流となっているでしょう。DXを推進することで顧客のニーズに合ったサービスを提供しやすくなります。またマーケットや消費者の行動変化に対応しやすくなるため、顧客の満足度向上にもつながるでしょう。
アナログ業務が多ければ、どうしても紙やインクを多く消費してしまうでしょう。さらに書類を保管するためのスペースも必要となり、DXを推進することでコスト削減も図れます。さらに業務の効率化ができれば、人件費削減にも繋がるといった効果も得られるでしょう。不動産業界の規模縮小が予想されているからこそ、コストカットなどの経営の基盤を強化することが大切です。
不動産取引は「宅地建物取引業法」を順守して契約を進めなければなりません。その法律の中に不動産取引で用いている重要事項説明書や契約書に関しては、書面による交付が義務となっているのです。それらの書類のデータ化して送付できないため、どうしてもデジタル化が進まない状況になっています。さらに不動産取引の対応はマニュアル化しにくく、対面で交渉や説明をしなければならないケースも多いのでしょう。
不動産業界においてIT人材確保が難しい点もDXが進まない要因の一つでしょう。日々の業務に追われる状態で、新しいシステムを導入するのはハードルが高くなってしまいます。さらにITについて詳しい社員がいなければ、DXのメリットや費用対効果も分かりにくく、DXが進みにくくなるのでしょう。
不動産の取引は1社だけで完結するわけではありません。どうしても横のつながりが強く、自社でITを導入したとしても仲介の相手がアナログであれば、アナログに引っ張られやすくなります。不動産業界全体がデジタルを導入しなければ、なかなかDXが進まないでしょう。
不動産DXを推進するのであれば、まずは不動産テックを知ることが大切です。不動産テックとは不動産業界にITなどのテクノロジーを取り入れる意味で、不動産テックの情報に強くなればDXの推進に役立つでしょう。
DX推進を図るためには、組織そのものを改革することが重要です。経営者がDX推進を望んでいなければ、どんなに周囲が働きかけてもDXを進めることは難しいでしょう。DXを担当する専門部門を設け、経営者・IT部門・業務部門などの他部門との連携を図る体制を整えてください。
DXを推進するためには、ITに強い人材を確保することが大切です。デジタルの基本的な知識だけでなく、応用力のある人材が良いでしょう。もし自社だけで人材確保が難しい場合には、DXパートナー企業に相談することも検討してください。
DX推進したにも関わらず、失敗するケースも少なくありません。失敗の要因の一つがDX推進の目的を持っておらず、なんとなく取り組んだ状態だったからです。DXを推進するのであれば、組織全体でDX推進の目的を明確にしましょう。どのようなビジネス展開につながるのかなど、ビジョンを明確にし共有にすることが大切になってきます。
組織改革や目的の明確化などを行った後は、実際にDX推進に必要となるシステムを導入します。新しいシステムを取り入れることで、業務の効率化や新ビジネスの創出、レガシーシステムからの脱却などにつながるでしょう。ただシステムと言っても様々あるため、まずは自社に適したシステムを慎重に選ぶことが大切です。
引用元:株式会社モンスターラボ公式HP(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_cbre/)
CBREはアメリカに本部を構える事業用不動産会社。コアワーキングスペースと従来の賃貸モデルとのコスト比較の問い合わせが増えてきた中、各種試算をスプレッドシートで管理することに限界を感じていました。
運用中のスプレッドシートを分析し、ウエイトの大きな数字を抽出。あわせて、従業員や顧客へのヒアリングを通じ、利用者が求める機能要件を厳選。これらのリサーチで得られた結果をUIに落とし込み、操作性とビジュアル面に優れた「CALC」を開発しました。
当初は社内ツールとして開発に着手したシステムでしたが、社内で高い評価を集めたことを背景に、CBREはクライアントにも同じシステムを提供したいと提案。広告・マーケティングの視点からも活用できることもポイントとなり、今や60ヶ国を超える地域で一般公開されるシステムへと成長しました。
引用元:モンスターブログ(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_cbre/)
引用元:株式会社モンスターラボ公式HP(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/portfolio-case_haseko/)
「漠然とマイホームの購入を考えているものの、何からどうして良いのか分からない」という初期段階の潜在顧客に対し、いかに迅速に効果的なアプローチができるか、という点が営業上の課題でした。
多くの方にとってダウンロード不要というメリットを活かし、LINEアプリを活用したシステムの開発に着手。家族構成や年齢、世帯年収などの僅か5項目を入力するだけで3件のおすすめ物件情報が表示されるなど、操作中にユーザーがページ離脱しないよう仕組みをシンプルにしました。
時勢の影響で一時サービスを中断していたものの、2020年6月からサービスを再開。初動のあった潜在顧客を非対面型モデルルーム見学につなげるなど、時代に則した新たな不動産サービスの展開が始まっています。
引用元:モンスターブログ(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/portfolio-case_haseko/)
オフィスビルで初めてデリバリーロボットの始動を実施したいと検討。DXを推進することで「Real Estate as a Service」を実現し、社会課題の解決につなげたいと思っていました。
非接触対応を図るために、顔認証による「オフィス入退館システム」「ホログラム」「専有部の入り口の自動ドア化」の技術を導入。またロボット活用の本格化のために、デリバリー・清掃・運搬のロボットを稼働、エレベーター・自動ドアを用いた自立走行を実現しています。さらにインフラシェアリングによる全フロアが5G対応可能です。
オフィスで働く人にとって完全非接触でオフィスを利用することができ、フードデリバリーの利便性アップや5G利用できることでの利便性向上につながっています。さらに施設従業員にとっては清掃・運搬の作業効率のアップ、集荷作業の負担軽減などの効果も得られているでしょう。
引用元:三井不動産株式会社|DX白書2022(https://www.mitsuifudosan.co.jp/dx/dx_hakusyo.pdf)
一人一人が楽しみながら体調管理を行い、気が付いたら習慣化できる仕組みの構築を検討。さらに企業の健康な経営推進のサポートができる総合プラットフォームを提供したいと考えていました。
従業員向けに「&Well For Worker」を取り入れ、従業員が生き生きと働ける環境をサポート。意識変容・行動変容・習慣化といったステップを提供しています。また人事・健康担当者向けに「&Well For HR」を導入し、健康経営の視点で従業員の健康に対する施策を評価し可視化するシステムです。
「&Well For Worker」では歩数ログ・生活習慣管理がアプリで気軽にできるようになりました。動画コンテンツやクイズなどで健康に関するラインナップを提供。毎日アプリを使うだけでポイントが貯まり、商品と交換できる仕組みになっています。「&Well For HR」ではアプリの利用データに基づき企業単位で健康への課題などを可視化できるようになりました。また健康経営度調査の評価アップにもつながるでしょう。
引用元:三井不動産株式会社|DX白書2022(https://www.mitsuifudosan.co.jp/dx/dx_hakusyo.pdf)