製造業は新型コロナウィルスなどの影響を受けて、売上高・営業利益は減少傾向にあります。ただ国民生活を支えるための医療用物資の需要は高まり、将来のリスクに備えて国内サプライチェーンの構築の強靭化は必要不可欠です。しかし多くの企業で設備投資などを控える傾向にあり、中小企業を含めたサプライチェーン全体を巻き込みつつ、今後は民間一体となった対策が求められるでしょう。DXはサプライチェーンの構築において非常に重要な役割を果たし、さらにダイナミック・ケイパビリティ強化のカギにもなります。
このページでは製造業におけるDXの課題や解決策などを解説するので、ぜひチェックしてください。
そもそもDXとはデジタルトランスフォーメーションのことで、デジタル技術を活用して業務フローの改善や新しいビジネスを創出することなどを表す言葉です。
製造業DXとはITの導入によって省人化などをはかり、リードタイムの短縮・生産性向上・品質向上など業界全体の変革を目指すものと言えるでしょう。少子高齢化による人手不足は製造業においても重要な課題のひとつで、新たな人材を確保し教育するのが難しい現状です。だからこそDXを推進させることは製造業界において重要となります。
日本全体において少子高齢化が進んでおり、人口減少が著しく深刻化している現状があります。製造業においても人材不足は深刻な課題となっており、新たな働き手が見つからない状況に陥っているでしょう。もし人手不足が常態化してしまえば、労働環境の悪化につながり、社員のモチベーション低下や離職率アップ、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥りかねません。だからこそ雇用を促進するだけでなく、抜本的な解決法が求められているのです。
製造業の場合は高いスキルが求められるケースも多く、特定の個人に業務が属してしまうケースが多々あります。人材不足が常態化していれば、たとえ新たな人材を確保できたとしても教育に時間も割くことが出来ずに、若手人材が育成できないまま退職してしまうケースも。さらに従来の終身雇用制度という形から成果主義制度に移り変わっているため、高度なスキルを持った社員が早期退職する場合もあります。しっかりとスキルを伝承しなければ生産効率の低下・新製品開発が困難・技術そのものの損失などにつながる恐れがあるでしょう。
ウクライナ情勢の緊迫などの影響によって原油などのコストが高くなっており、また脱炭素化・CO2の排出量削減を図るためのコストも製造業にとって大きな負担となっています。さらに労働人口が著しく減少している中において、安価な給与では人材確保が難しい状況です。少しでも優秀な人材を確保するためには給与面や福利厚生の待遇を良くするなど、魅力的な職場環境をアピールしなければなりません。
それらの複数の要因によって極端にコストアップをきたしている現状があり、これまでと同じような収益を得ていたとしても業績低迷に陥ってしまうのです。
手作業の多い製造業において、ICTを活用することで様々な課題の解決につながります。しかしICT活用に対して経営陣の理解が得られない、ICT人材を確保しにくい、システムのレガシー化、導入費用面などの問題があり、とくに中小企業では導入が難しい現状があるでしょう。
ただ新型コロナウィルスなどの影響もあり、デジタル化への意識は高まりつつあります。製造業を取り巻く課題を少しでも解消するために、IT投資を検討する企業も増えてきているようです。
製造の現場にICTを導入することで製造業務の自動化・半自動化や事務業務の自動化も実現でき、より人員削減を図ることができるでしょう。また生産性効率の維持・向上にもつながる効果も期待できます。
DXを推進することによって、製造過程のほとんどの工程情報の「見える化」が実現できます。見える化を図ることで、設備状況・進捗状況などのデータを一元化することができ、もしトラブルが発生したときも迅速に対応しやすくなるでしょう。さらに繁忙期・閑散期などの時期も把握・調整しやすくなる、顧客データの有効活用、物流の最適化などのメリットもあり、業務の効率化アップにつながります。その結果、新技術の開発・新顧客へのアプローチなどにも時間を割くことができ、企業経営にとってプラスの効果をもたらすでしょう。
製造業にとって人手不足の問題は早急に解消しなければなりません。DXを図ることによって手作業で行っていた工程を機械で担うことができ、機械では難しい作業だけに人手を回せます。もちろん機械化反対の社員も一部存在することで離職率が一時的にアップする可能性はありますが、DXは人員確保が難しい現状において企業発展に大きく貢献するでしょう。さらに機械化によって品質の安定性アップ・生産性向上・人件費削減などのメリットも期待できます。とくに手作業であれば作業員によって品質にバラつきが生じやすくなりますが、機械化で品質が安定することで顧客からの信頼性も高まるでしょう。
原材料などのコストや人件費も高くなっている状態において、ほとんどの中小企業が会社を経営していくのが難しい現状となっています。資金面での余裕もない状態で、ITへの投資を検討すること自体が困難と言えるでしょう。
システムの機械化によって生産の効率がアップするということを認識している企業も実際にいますが、DXをどう取り入れたら良いのか分からないケースも。ITに詳しい知識を持った人材が不足しており、DX推進のリーダーシップとなる人材がいない現状なのです。
日本の製造業において現場主義や職人主導などの考え方が深く根付いており、どうしても新たなシステム導入への抵抗感が強い業種と言えます。これまでは職人が全て作業を行っても問題はなかったかもしれませんが、熟練の職人が年齢を重ねたときに若手の職人が育成できていなければ全て失ってしまうでしょう。これまでの方法を見直し、レガシーシステムからの脱却が重要になってきます。
経営陣のなかではDX推進によってスマート工場を理想に掲げているかもしれません。しかし実際に働く製造現場では日々の業務に追われており、理想だけを押し付けられても「今」を変えることはできない状況でしょう。具体的な説明もなく、メリットも感じられなければ、現場でDXを推進するのは困難です。
DXを成功に導く最も重要なことは、着実に段階的に取り組んでいくことです。一気に進めようとすれば現場での混乱を招く可能性も高く、社員からの反発も起こりやすくなるでしょう。まずは現場の理解を得ることが大切となり、どのような課題を抱えているのか、どうなったら作業負担が減るのかなどのデータを収集してください。
DXを推進するケースの中でシステム部門に全て丸投げするケースもありますが、これでは企業にとって最適なDXを取り入れることが困難です。部門ごとでなく経営単位で全体像をイメージし、具体的な施策をシステム部・情報システム部などに任せるようにしましょう。その際、製造現場の担当者の理解をしっかり得ることも忘れずに。
DXの方針が決まれば、まずは「DX推進部門」を設置しましょう。ITなどは専門的な知識も求められるため、必ず全体を統括できるIT人材を確保しなければなりません。できればIT知識だけでなく、情報を取り扱うプロであり、製造業にも精通した人材が理想的です。
業務全体を一気に変更してしまえば、社内に混乱が生じやすくなり、失敗したときのリスクも高まります。まずは小さなことから始め、必ず効果検証を行うようにしましょう。しっかりと成果を確認できれば、次の事柄に移ることでスムーズにDXを推進しやすくなります。
引用元:株式会社モンスターラボ公式HP(https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_otis/)
高品質なエレベーターの製造で多くの業界から信頼を獲得してきたオーチス。しかしながら近年はスマートオフィスの需要が加速して社会のデジタル化が進む中、単に高品質なエレベーターを製造・納品するだけでは競争に勝てない時代に入りつつあります。
搭乗者のエレベーター待ち時間の短縮、扉の開閉時間のコントロール、障害者の搭乗のサポートなど、様々な機能を搭載したアプリを開発しました。
プロジェクト開始から9ヶ月でIoTプラットフォーム「eCall」をリリース。世界各国に導入されている200万機のエレベーターにも対応できるため、オーチスの事業分野の拡大が見えてきました。
引用元:https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_otis/
引用元:株式会社モンスターラボ公式HP(https://monstar-lab.com/dx/case-study/interview_kubota/)
海外で使用中のクボタ製品が故障した際、現地のエンジニアのサポートだけでは不十分なことが少なくありません。エンジニアの能力に左右されない故障診断システムが必要でした。
不具合の状態を自動的に点検し修理方法が表示されるアプリ「「Kubota Diagnostics」を開発。スマートフォンをかざすだけで故障箇所や状態を特定することが可能となりました。
海内販売店向けのMTGで大きく注目を集めた「Kubota Diagnostics」。本アプリに対応する機器の拡大も視野に入れるなど、新たなビジネスチャンスへの期待も生まれてきました。
引用元:https://monstar-lab.com/dx/portfolio/case_kubota-diagnostics/
それぞれの顧客への柔軟な対応の必要性や、社会変化に伴う需要激減のリスクを感じていました。さらに各工場において異なった製品の製造を行っており、図面の書き方・技術標準などが各工場で異なっている現状も。そのため共通する部品でも共通の仕様での生産が難しい状況でした。
工場ごとで異なっていた設計部門の図面などは、設計情報を共通化することで一元化を実現。さらに各工場で異なっていた生産管理システムの統合についても検討を行いました。
各工場での人材・技術の交流が活発化され、技術の共通化を図っただけでなく、それぞれの向上での強みを生かした生産体制の構築を実現でき、効率化アップやコスト削減にも繋がりました。
また工場間で連携が促進されたことで多品種少量生産のニーズにも応じられるようになり、人手不足時の負担分散など柔軟な対応が行えるようにもなりました。
引用元:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf
3DCADデータや試作の特製データなどの情報のデジタル化を図りながら、技術開発や生産準備に成果を上げてきた実績はあったものの、製造や顧客から得たデータのタイムリーなフィードバックが課題として残っていました。社会変化による危機管理も高まり、会社全体のデジタル化を検討。
効率化・費用対効果などの面を踏まえ、工場のIoTから着手。工場共有プラットフォームを数年かけて段階的に投資し、製造側はデジタルを活用したトヨタ方式で社員が小規模なテーマを掲げ実行・効果を出すというボトムアップの取り組みを実施しました。
まずは生産部門と連携を図り、方法システム部門において工場IoTのプラットフォームセキュアを整えました。それを用いて現場プロジェクトを立案し、取り組みの数を徐々に増やすことによって費用対効果を高めることに成功。
さらにエンジニアリングチェーンやサプライチェーンを含めたデジタル化への適用させることで、商品力アップ・法規対応など付加価値のアップにもつながっています。
引用元:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf