DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、既存の業務やプロセスのデジタル化だけにとどまらず、デジタル化によって新たな価値や変革をもたらすものです。銀行・金融業界においては、たとえばネットバンキングによって単に銀行の窓口に行かなくてもよくなるだけでなく、ビッグデータやAIを活用して一人ひとりの顧客が求めるものを的確に提供するようなサービスが求められます。これからはテックジャイアントやフィンテック企業がこの分野に積極的に進出するとみられており、DXの推進によって現在の地位を保ちかつ発展させていく必要があるでしょう。
参照:Pop!nght|【2021年版】銀行業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)
銀行DXとは、銀行業務に関わるさまざまなシステムをデジタル化し、単一の銀行組織だけではなく、顧客も含めた銀行業界全体を根本から改変する考え方のことです。手続きの簡素化や業務の効率化だけではなく、新規顧客の獲得プロセスや新商品の開発など、あらゆる局面に変化をもたらす取り組みです。
現在の銀行・金融業界はさまざまな課題を抱えています。
経済産業省は2018年の「DXレポート」のなかで、2025年の崖と呼ばれる問題に対する警鐘を鳴らしました。これは日本企業がDXを推進しなければ2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じるというものです。
銀行・金融業界も他人事ではなく、限りある時間のなかで効率的にDX化を進めなくてはなりません。
参照:経済産業省|DXレポート
一方で銀行・金融業界の地位は盤石ではありません。
たとえば最近では現金や株式といった銀行が従来から扱ってきた資産とは異なる、暗号資産が注目を集めています。暗号資産はまったく新しい形の資産であり、法律の問題もあって、かんたんに取り扱いを始められるものではありません。
さらに規制緩和と技術の発展により、テックジャイアントやフィンテック企業がこの分野に進出しようとしています。これらの企業は過去のしがらみがないため、DXをはじめ新しい取り組みを積極機に推進でき、従来の銀行や金融業界にとって脅威となるでしょう。
参照:国民生活センター|国民生活 No.117、Pop!nght|【2021年版】銀行業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)
日本では少子高齢化が進んでおり、それとともに企業数も減少しています。
人と企業が減ればそれだけ銀行の需要が減り、より競争が激化することは間違いありません。
これまでの銀行・金融業界の枠にとらわれない、独自の魅力を追求する必要があります。
参照:EXAWIZARDS|金融DXとは?課題とポイントを最新事例とともに紹介
このような状況のなかでDXは現状打破のための切り札といえる存在です。しかしながら、銀行・金融業界においてDX化がうまく進んでいるとはいえません。その理由を解説します。
DX化がうまく進んでいない原因の1つがレガシーシステムの存在です。
銀行・金融業界は比較的早くから業務の電子化を進めてきました。しかしながら、一度導入したシステムはなかなか更新できません。大手銀行がシステム更新に失敗して顧客に影響が出たニュースを見た方も多いでしょう。
このようなレガシーシステムはクラウドやAIを扱う必要があるDXに対応できず、DX推進の足かせとなっています。
参照:Monsterlab|金融業のDXとは?先行事例をもとに課題やポイントを解説
DXの推進にはデータ分析やAIに精通したIT人材が欠かせません。しかしながら、日本全体の問題としてそのようなIT人材が足りない状況が続いています。
また、銀行・金融業界では伝統的に「FORTRAN」や「COBOL」といった昔ながらのプログラミング言語を使ってシステムが構築されてきました。
新しくDX化のためのシステムを構築するにしてもまずは現状のシステムを理解しなくてはなりません。現在ではFORTRANやCOBOLを扱えるIT人材は少なく、その技術継承も課題の1つです。
参照:Monsterlab|金融業のDXとは?先行事例をもとに課題やポイントを解説
DX化の肝は効率化であり、そのためにできるだけデジタル技術を活用した自動化が進められます。しかしながら、ITリテラシーがないユーザーにとってデジタル技術は扱いやすいものとはいえず、急激な変化に対応できないかもしれません。
多くの既存顧客を抱える銀行・金融業界はその方たちをないがしろにはできず、しっかりとしたガイドやサポートが求められるでしょう。
もちろん、業務全体を効率しようと思うと従業員に対する教育も必要です。
参照:Monsterlab|金融業のDXとは?先行事例をもとに課題やポイントを解説
銀行・金融業界がDXを進めるための施策を解説します。
DX化に有効な手段としてビッグデータの活用が挙げられます。銀行・金融業界は多数の顧客からのデータを持っており、それを分析・活用することで新たな価値や変革が生まれるでしょう。
ビッグデータの収集や分析にはクラウドが有用であり、通常の銀行業務も含めてクラウド化すれば業務効率の改善もあわせておこなえます。
また、RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、単純な繰り返し作業を自動化するツールの導入も有効です。人間がおこなうよりも高速かつ正確であり、RPAによって節約できた時間やコストをDX化に充てることができます。
参照:NotePM|銀行が推進するDXを徹底解説!解決すべき課題や選ばれるITツール・活用事例を紹介、teradata|クラウド×ビッグデータ:最先端テクノロジーの融合で効率を上げる
AIやIoTといった先端技術の投入もDX化に有効です。
たとえばATMにIoTカメラを設置し、その撮影映像をAIで解析することでATMの稼働時間や台数の最適化が図れるでしょう。また、窓口で困っている顧客をAIで検出していち早くサポートすることで顧客満足度を向上できるかもしれません。
参照:NotePM|銀行が推進するDXを徹底解説!解決すべき課題や選ばれるITツール・活用事例を紹介
DX化に必要なデータ分析・AIの活用といった技術を持つIT人材は積極的に採用すべきです。
先述のようにIT人材は日本中で不足しており、そのなかでもデータ分析やAIに精通した人材の数は限られています。
優秀なIT人材の数がDX化の成否を決めるといっても過言ではありません。
参照:NotePM|銀行が推進するDXを徹底解説!解決すべき課題や選ばれるITツール・活用事例を紹介
どれだけDX化が素晴らしいものであっても、経営陣が理解できなければ積極的に推進されることはないでしょう。
経営陣には高齢の方が多く、ITの知識が十分でない方もいます。
DX化にできるだけ多くの予算や時間をかけられるようにし、かつ的確な経営判断ができるよう、経営陣のITに関する理解を深めなくてはなりません。
参照:NotePM|銀行が推進するDXを徹底解説!解決すべき課題や選ばれるITツール・活用事例を紹介
銀行・金融業界でDX化を推進するメリットを解説します。
最初に挙げられるのが業務の効率化です。
たとえば先述のRPA導入によって今まで人手でおこなっていた業務を自動化でき、時間削減につながります。
また、クラウドを導入すれば自社でサーバーを運用する必要がなくなるほか、インターネットにつながればいつでもどこでも仕事ができるようになるでしょう。
参照:EXAWIZARDS|金融DXとは?課題とポイントを最新事例と共に紹介!
業務効率を向上できれば、その分コストが削減できます。
自動化にしてもクラウドにしても自社で人間がおこなわなくてはならない業務が減り、その分の人件費が削減可能です。
削減したコストをDXに活用することでさらに業務効率化・コスト削減を進められます。
参照:EXAWIZARDS|金融DXとは?課題とポイントを最新事例と共に紹介!
銀行・金融業界では伝統的にハンコによる認証、紙の書類による本人確認がおこなわれてきました。しかしながら、これらの手段は利用者にとって利便性が高いとはいえません。
顔・指紋・静脈・声紋・掌紋といった生体認証を活用すればセキュリティレベルを向上しつつ顧客の利便性を向上できます。
また、本人確認書類も紙ではなくスマートフォンのカメラを活用するなどすれば、確認までの手間と時間を削減可能です。
参照:EXAWIZARDS|金融DXとは?課題とポイントを最新事例と共に紹介!
DXを推進すれば銀行・金融業界の枠にとらわれない新規ビジネスへの参入が可能になります。
銀行・金融業界が持っている顧客の資産データは他の業界にとって喉から手が出るほど欲しいものです。それを自社の新たなビジネスに利用する、あるいは個人が特定できない形で他社に提供するなどの活用が考えられます。
参照:EXAWIZARDS|金融DXとは?課題とポイントを最新事例と共に紹介!
人口減少による資金需要の減少と、地方銀行としての店舗網維持という社会的責任との狭間で、より高い生産性と地域への責任をコネクトした新しいスタイルの銀行を目指す必要がありました。
人にしかできない部分は人がやり、デジタルでもできる部分はデジタルがやるというスタンスのもと、各種部門が横に連携してさまざまな取り組みを実施。具体的には、店舗業務の効率化を図るタブレット「AGENT」の導入や、個人向けローンの新規事業「HOME」などを企画・開発しました。
煩雑で時間のかかる銀行手続きをタブレット1台で完結できるようになったことに加え、住宅ローンの契約もデジタルで完結。行員の作業効率化と地域住民のための利便性向上につながりました。
年間35,000件も届く「お客様の声」。人手で内容をタイムリーに把握することが難しく、せっかく頂いた「お客様の声」をCS向上へとつなげられない状況が課題でした。
「お客様の声」の分析システムを導入し、特定の意味の単語を含む文や同じ意味を含む文をグルーピング。結果を分析者に回して新たな知見を獲得した後、現場にフィードバックする形としました。
多くの顧客が共通して持つ意見・要望の効率的な分類が実現。人による内容チェックに比べ、業務効率が向上しました。また、分析の高度化を通じ、新たな知見を獲得できるようになったことも、システム導入による大きな変化でした。
手書きの送金依頼書をはじめ、個人向け外国送金サービスには煩雑で時間がかかることにBIPROGY株式会社が着目。マネーロンダリング防止などの観点から、同社は銀行の業務負荷の増大も課題と考えました。
課題の解決のために動き出したBIPROGY株式会社は、モンスターラボ等との協業のもと、タブレットを利用した外国送金受付フォームを開発。入力項目の手順を最適化するなど、手続きの簡素化を目指しました。
外国送金手続きにおけるユーザー側のヒューマンエラーが減少。営業店での手続き後の業務も飛躍的に効率化。2019年の販売開始以来、全国の多くの金融機関で利用が始まっています。
アプリを利用できる商業施設のオープンに合わせ、短納期で決済アプリを開発する必要がありました。密にコミュニケーションを取れる開発ベンダーとして、鹿児島銀行はモンスターラボを指名しました。
経験豊富なプロジェクトマネージャーと鹿児島銀行内のアプリ開発担当者との間で勉強会を実施。スピーディなコミュニケーションを通じ、iOSとAndroidの差異を可能な限り考慮した設計をおこなうなど、イメージするシステムや機能の構築を協業と分担で進めていきました。
商業施設のオープンに合わせたアプリのローンチに成功。魅力的な施設ながら完全キャッシュレスということもあり、若い層だけではなく高齢者層からも、アプリが着実に受け入れられています。
DX化に欠かせないビッグデータの活用ですが、データはあってもその保存場所が分散していたり、フォーマットが異なったりして統合が難しいという問題がありました。
複数のシステムに分散しているデータを統合したデータ活用基盤の構築をおこないました。このなかには顧客情報、ウェブサイトでの行動履歴など、あらゆる情報が統合されています。また、データはクラウドのMicrosoft Azureに構築しました。
統合されたデータを分析し、顧客ごとにパーソナライズされた商品・サービスを表示するレコメンド機能の提供を開始しました。今後もデータを活用した情報発信やサービス展開をおこなっていく予定です。
DX化に欠かせないデータ分析をビジネスに活用するには、データサイエンティストだけでなくすべての社員がデータ活用のために必要な基礎知識やノウハウを持っていなくてはなりません。しかしながら、特定の担当者をのぞくとデータ活用の重要性やデータ分析に関する理解が不足していました。
ブレインパッドの支援による研修などの教育をおこないました。一般的な内容だけでなく、各社に最適化された研修もおこなっており、より実践的な内容となっています。
研修へは想定以上の応募があり、参加者からもおおむね高評価を得ました。データ活用・分析に対する知識が底上げされれば、DX化が進めやすくなるでしょう。